1日目

  • On 2018-02-01 ·


9時間50分のフライトのあいだに、これからの40日が一体どんなものになるのかイメージしようとしてみた。太平洋の一線を越えると、明日になっていくはずの今日がまた始めのほうの今日に戻ってしまう。長い1日目。今、幸せにも私が新しい出会いの場所に向かっているのは、日本のBEPPU PROJECTと、ロサンゼルスのリトル東京サービスセンター(LTSC)、日米文化会館(JACCC)、そしてその周辺機関の連携による「KASHIMA Artist in Residence in Los Angels」 という機会によって招聘していただいたからだ。今日までにすでにたくさんの方々が関わって私を送り出してくださったことに感謝しきれない。しかしそれと共にきっと、ある吸引力みたいなものが世界のどこかに働いているから、東に向かって飛んでいるはずなのに西の果てにちゃんとたどり着くんだろう。

アーティスト・イン・レジデンスというからには、今向かっている自分が本当にアーティストなのかちょっと疑いはじめて振り返ってみる。10年と少し前に出会った演劇、つい2年くらい前から見よう見まねでやり始めた美術、日々を支えてくれる別の仕事や社会生活が全部ごちゃごちゃになって、自分でも何者なのか全然わからなくなっている。けれども、そういうのを剥がしながら遡っていくと、たぶん、なんの論理的根拠もなくただ「作りたい」と思っていたこどもの頃の私が、続ける道を探している。吸引力…! 少なくともこれから40日間はなにか新しいものを生み出すために住む場所と、自由に使える時間がある。

時間といえば、演劇ではいつも、1時間とか2時間のタイムラインを集団で作る。つまり「上演」という一つの時の流れの中で、意図的に起こすさまざまなできごとを順番に組み立て、ひとつひとつを意味づけながら、できごと同士を結んだり、逆に関係ないものをもってきてぶった斬ったりして時空を編集する。同時に、その時間を何度でも再現できるように鍛え、強度を高めていく。それに比べて、これから作るのは絶対再現不可能な、意図せぬ40日のタイムライン。長い。しかも俳優もお客さんもいない。私個人の周りにしか起こり得ないできごとを、即興で組み上げる。どうしたらいいのかと答えのないことをだらだら考えて、なんとなく、道具はブログとビデオとクレヨンにしようと思った。

ロサンゼルス国際空港に着くと、先日スカイプで会ったグラントさんが迎えに来て待っていてくれた。とてもかわいいサインボードで迎えてもらったのは初めて。彼は日系4世で、かつコリアン3世だと言っていた。彼のひいおばあさんが日本から移住してきたのは、ちょうど100年くらい前のこと。車でホテルまで行く道中、「コミュニティ・オーガナイザーって何をしてるんですか?」という質問から、この町の歴史的な重要性や、最近起こっている問題のことをいろいろ話してくれた。(それについては後日書こうと思う。)荷物を置いたら、近くのお店や交通機関のツアーをしてもらい、これで明日からリトルトーキョーの近くは一人で歩けるようになった!

KASHIMAのみなさんは、「展覧会のように作品を作らなくちゃと思わなくていい。経験して、考えたことが未来につながればいい」と、最高に豊かな学びの時間を与えてくださった。もったいなくて、この一瞬も惜しいような夜に、実験の記録を書き始めてみる。

I will translate at a later date.