8日目

  • On 2018-02-08 ·

今日の始まりはこの人。

いまベイルートにいるジョナサン・タカハシという4世のアーティストとSkypeしながら日付が変わった。彼はアーティストであり、同時にLTSCのメンバーでもあって、昨年1ヶ月のあいだ別府に滞在した人物。いわば今回の滞在につながるきっかけを作ってくれた人の一人だ。こちらに来てすぐ彼につながって、何度かメールでやりとりしてきたのだが、彼は「別府のみなさんに本当に良くしてもらったから自分もお返ししたいんだ」と言っていた。この初対面のSkypeにいたっては、私のまだ漠然とした考えや希望を聞いてくれながら、実に1時間半以上、いや2時間近く、ロサンゼルスのオススメの場所の紹介が止まらないのだった。それも全部興味深いものばかり!週末、98歳の彼のおじいちゃんにも会わせてもらえるかもしれない。とても楽しみ!

朝になって、今日は9時からランチの準備があるというので、動く気満々で出かけた。それなのに、10時20分頃までは食事が配達されてこない。朝はコーヒーを飲みながら、みんなでゆっくり座っておしゃべりするための時間だった。70代、80代の先輩のペースだということを忘れてはいけない…!やっと食事が届くと、今日は車で近所への配達を手伝うことになった。一軒家やアパートの一室、小さな店舗などにいらっしゃるお年寄りに、お弁当とミルクを渡して「調子はどう?」と短い会話を交わすだけ。65歳以上は3ドルでデリバリーしてもらえるらしい。寝たきりの方のお宅には市から派遣されるヘルパーさんがついてお世話していた。1時間ほどで全ての配達を終え、食堂に帰って私もまかないをいただき、大量の食器を洗って今日はおしまい。

そんな私の新しいボランティアの現場、高齢者住宅の「東京タワー」は上の写真の正面奥に見える建物。ちなみに左手にあるのはアラタニシアターという立派な劇場。中にレズリーのオフィスがある。先日お邪魔した時、ここの舞台監督に「私も劇場付きの技術スタッフとして働いていたんです」と挨拶すると、「これから照明を新しいシステムに全部組み替えるんだ。幕類も全部新しく吊りかえるところ。最高に興奮してる」と言いながら踊っていた。そうやってちゃんとメンテナンスされた劇場設備に、時々日本から狂言や太鼓などを呼んできて公演できるようになっている。ただ、残念ながら年中稼働しているわけではないみたい。右手が日米文化会館(JACCC)のコミュニティセンター。そして、いま私が立っているここはノグチプラザと言って、イサム・ノグチがデザインしたというご自慢の広場だ。コミュニティのお祭りごとはこの場所でよく行われるらしい。

JACCCが主催しているウクレレのクラスを見学させてもらった。毎週木曜日の午後に行われる1時間半のクラスを皆さん本当に楽しみにしている。高齢者ならウクレレは無料で貸してもらえるし、日本の歌を教えてくれるからだ。ただ、私にはちょっと長かった。開始30分で、同じ話を繰り返しループしてまったく先に進まないのに気付いてしまい、あとの1時間はこっそり抜け出してカフェで過ごした。当たり前のことだけど、シニアとつきあうには「ゆっくり」と「くりかえし」に耐えないといけないなぁと、つくづく思った。おもしろい。ここへ来て第二の時差ぼけに直面するとは。

コーヒーで時間を潰しているうちに、ウクレレのクラスを終えてみんなが出てきた。そして、昨日のボランティアで会ったあの中国人女性が、「あたしの部屋見たい?」というので、「はい」と言ってついて行ってみた。彼女の家は15階。バルコニーからの眺めを私に見せたかったみたい。


でも来て1分もしないうちに急かされた。「友達を病院に連れて行くから急いでるの。あなたも一緒に来る?」と誘ってくれた。夕方の予定までにはまだ時間があるので軽い気持ちで「行きます」と車に乗った。お友達のトシコ・ムトーさんは漫画家。50年前に日本で大ヒットしたという「小サナ恋人」という連載漫画の作者だ。彼女の病院までは、車で20分もかからなかった。病院の前でお別れをして、ドライバーは「ちょっとビーチを見に行く?」と言って左折したのだが、この後が大変だった。サンタモニカのビーチへは、1時間走ってもまだまだ着かなかった。そんなに遠いと知らなかった。夕方には予定があると何度か言ってみたのだが、言ってもすぐに忘れてしまうのだ。そして、2人でドライブをする道中、人生の話を聞かせてもらうことになった。
予定はキャンセル。渋滞ですっかり夜になってしまった。