なまえのスーパー

2016年8月
茨城県ひたちなか市那珂湊 旧大野屋スーパー跡

みなとメディアミュージアム2016

2016年8月16日、終戦記念日の翌日に、スーパーマーケットの跡地で、地元の子どもたちや学生30名程度が参加するワークショップが行われた。参加者は、オリジナルのカラフルな名札を作り、店の中のあらゆるものにペタペタと貼っていく。90分のワークショップの最後に、小さな白い紙に自分の名を署名して、この空間に飾り付ける。そしておもむろに、一人のパフォーマーが詩のパフォーマンスを始める。演出家・坂田ゆかりは、田村隆一の詩『白い紙』と、一人一人の署名、そして、たくさんの名前に溢れたこの空間を使って、戦争の責任について考える時間を演出した。

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(最後の2分間は音声があります)

詩:田村隆一「白い紙」

演出:坂田ゆかり

出演:稲継美保

書:露木春那

写真:江良友理菜

スタッフ:東 彩織

製作:四千の日と夜プロジェクト

主催:みなとメディアミュージアム実行委員会
共催:宝塚大学東京メディア芸術学部、常磐大学
後援:ひたちなか市、ひたちなか海浜鉄道株式会社、おらが湊鐵道応援団、ひたちなか商工会議所

『白い紙』 

もうこれまでに
いったい なんど白い紙に
ぼくは署名してきたのだ?

鉛筆
クレイヨン
Gペン万年筆シャープペンシル

生れてはじめて
筆と硯を買ってもらったのは
雪の日だった

たぶん
昭和四年あたり
祖母に送られて

ぼくは仰高西尋常小学校までの道を
歩いて行く
雪と泥で

道はぬかっていて
以来
署名してきたのさ なんども

何千何万と署名してきたのさ
画用紙の裏
答案用紙

はがき
手紙
夏の日記帳

商業英作文
軍事的ノート
極秘電文

むろん
領収書借用書利息計算書トラベラー・チェック
祝儀不祝儀

そして ちいさなもの あのちいさな白い紙
言語の細い線 暗い海狭 一篇の詩のそのすぐ
あとに