12日目

  • On 2018-02-12 ·

今朝はグラントとミーティングだった。ジュンさんという女性スタッフも同席のもと、私の滞在の進捗を共有した。彼らは熱心に、私が参加できそうなワークショップやボランティアの機会を提案してくれる。それは本当にありがたいことだ。彼らの紹介がなければ、この短い期間にこんなにもたくさんの人とつながることは絶対にできない。でも同時に、本当は私がここに来て、なにか私のすでにやってきた方法論や技術をシェアするような住民とのワークショップを開催することにあまり意味がないのじゃないかと、戸惑いを持っていることもわかってくれていた。だからグラントは、私が勝手にお年寄りと仲良くなって出かけたり、あちこち話を聞いて回っていることを何よりも喜んでくれた。

LTSCのスタッフにとって、利用者である高齢者住宅の住人たちに、なにか企てたり提供することはできても、個人的な協力を求めることはとても難しいそうだ。「いろいろな許可をとるための手続きがあるから」と言っていたが、おそらく社会福祉という立場上、そこまで個人の人生に深く立ち入ることはできないのだ。ときに私のように無責任なよそ者が訪ねてくるからこそ、人々が語ってくれる言葉ってきっとあるんだと思う。そのことは、私も徐々に理解してきたつもりだ。だからこそ、本当に彼らの惜しみないサポートに感謝している。そして、もっとアクロバティックに、この異質な役割を楽しみながら、できることなら私も少しは何かに貢献したいと願う。

ミーティングの最後に、グラントとジュンさんは、もう一人大切な人を紹介してくれた。リョウコさんだ。彼女もLTSCのスタッフで、ここで働く前は「羅府新報」という、100年以上続く老舗の日系新聞社で記者をしていたという。私も、ここの人たちがよく “Rafu Shimpo” を読んでいるのを目にする。ちなみに「羅府」はロサンゼルスという意味。昔の日本人はそう表現したらしい。

リョウコさんによると、戦争をここで経験した日系人や、収容所のことをよく知る人たちとも直接つながれるかもしれないことがわかった。滞在の後半は、人との出会いでもっと忙しくなるのかもしれない。そう考えると急にソワソワしてしまって、今日は日系とか日本とかアメリカなんてことは忘れて、美術館と劇場をはしごした。

●Adrián Villar Rojas: The Theater of Disappearance @ The Geffen Contemporary at MOCA
https://www.moca.org/exhibition/adrian-villar-rojas-the-theater-of-disappearance

●MOCA Grand Avenue
https://www.moca.org/collection

●Daïchi Saïto: Material Traces @ REDCAT
https://www.redcat.org/event/da-chi-sa-material-traces