13日目

  • On 2018-02-13 ·

午前中は日課のKOREISHA昼食会。献立はけんちん汁、ご飯、もやしの和え物、ミルクとオレンジ。

そして今日も、まずは9時から1時間以上のコーヒータイムだ。おしゃべりしていた方たちの仲間に入れてもらった。そのうちの1人は、女性の服装をしているけれど、お髭を蓄えていたので男性かな、と思った。その方はもう45年間日本に一度も帰っていないというが、日本のことをよくご存知なのは、いつも 「TV Japan」という日本のテレビを見て、日本語のスポーツ新聞を読んでいるからだ。渋谷の駅で切符の買い方がわからなくてもたもたしていると、「どけよおばさん」と若い人たちにキレられるんだってね、と言われて何も言えなかった。日本ってそういうイメージなんだろうか。私はご年配の人にそう言ったことはないけど、心の中で思ってしまったことはある。

新入りの私がESTAで入国したというと、観光ビザでここにいられるうちにアメリカ移住の糸口を見つけたいと企んでいる人だと思われたようで、「早く白人の恋人見つけて結婚しなさい、3ヶ月でグリーンカードもらえるわよ」とアドバイスされた。結婚といえどもグリーンカードを待たされて、何年ももらえなかったという人の話はよく聞くが、今はアメリカも税が欲しいので発行の手を速めているらしい。とはいえよく話を聞いてみれば、私にいきなり結婚を勧める張本人は、偽装結婚のトラブルに巻き込まれそうになったのだった。同性同士の結婚でもグリーンカードは認めてもらえる。高額をちらつかせて独り身のお年寄りに結婚を持ちかけてくる人がいるそうだ。でも「偽装結婚は犯罪なので、バレたら大変だから断った」と言っていた。

その人(彼/彼女)は日本の大学を出て、教員免許も持っている。英語はできるし希望に燃えて、学校の先生からの推薦状一つ持って空港へ行ったら、入国を止められてしまった。1ヶ月だけという期限付きでハワイに送還されそうになったところ、びっくりすることに持っていた新聞紙でビザを偽装して列に並び直し、本土に入国できたのだという。6人兄弟の末っ子で貧しかったので、「18のときから水商売でお金貯めてきたのよ」というその人は、こちらでゲイバーを開いていた。20年以上も。そしてゲイのコミュニティのつながりは強く、当時の常連のお客さんには有名人もたくさんいたという。本当におもしろい話をたくさん聞かせてくれた。そして、新入りの私へのもう一つのアドバイス。「そんなことはまだないと思うけど、絶対にお金は貸しちゃだめよ。日本人は日本人を騙すからね」それはその人の実体験だった。


昼食会のボランティアを終えて、ホテルの近くの「ファー・イースト・ラウンジ」に寄り道した。表のショーウィンドウには、紙細工の鶴が飾られている。この鶴は、先日も98歳のおばあちゃんが食事を待ちながらずっと折っていたものと同じで、いろいろな高齢者の家の玄関やリビングに飾ってあるのを見たことがある。いわゆる日本の折り鶴とは違うようだが、日系人の中ではかなり普及しているらしきもの。ハッピー・クレインというらしい。

中では1羽5ドルくらいで売っていたりもする。
興味を持ったお客さんに説明しているのはミドリくん。彼もLTSCのスタッフ。実はこのラウンジはLTSCが運営していて、様々なワークショップを開催したり、麻雀台を広げたり、みんなの社交場になっている。「ここで何かやってもいいよ」というありがたいお話は最初の方から聞いていたのだけど、なんとなく、これまで敬遠してしまっていた。今日はミドリくんと話したかったから来た。また、何かがつながったら来よう。

ぷらぷら町を散歩していたら、ばったりグラントとスコットに会った。「ゆかり、JANMに行きたい?」(ジャパニーズ・アメリカン・ナショナル・ミュージアムのことだ。)「でも今日は閉まってるでしょ」と言うと、グラントがここでいま会期中の企画展のキュレーターを紹介してくれて、その彼が休館日のミュージアムの中に入れてくれた。彼らの内覧に同行できるみたい。ラッキー!!


展覧会のサブタイトルは「リマ、ロサンゼルス、メキシコシティ、サンパウロにおける日本人ディアスポラのアート」とあるように、中はアメリカ大陸の北・中央・南を問わず日系ラティーノ・アーティストの実践を俯瞰するような構成の展覧会だった。じっくり見る時間がなかったので、また来たいと思う。

それから、秘密の部屋の鍵を開けてくれた。

何枚ものスライドウォールにかけられた絵画のコレクション。これだけでなく、箱の奥から戦時中にキャンプに収容されていた日本人が密かに書き溜めていた風景画を取り出してきて、見せてくれた。それは本当に貴重なものだった。本当に良いタイミングに通りかかった。

今日はここまで。部屋に帰って、LAで見たいもの、行きたい場所をもう一度整理してスケジュールを立て直している。だいぶ慣れてきて、夜道は歩くと危ないけれどUberを呼べば割とあちこち動けることもわかってきた。気軽にUberで往復できないくらい遠いところは、週末にまとめて回らなければ。改めて、ジョナサンとスコットからもらったリストはすごい!彼らのオススメのウェブサイトを見ていると、時間があっという間に過ぎてしまう。